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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──
リリスの間違い──。
それはレオに抱かれればアリエッタが傷付き、苦しむであろうと思ったことだ。
そうじゃない。そうじゃないのだ。
レオに愛されておらずとも、アリエッタはレオを愛してしまっている。
だからレオに抱かれてしまえば、一瞬だとしても幸せに浸ってしまう。
たとえ心のない行為でも、レオと結ばれた先に更なる不幸が待っていたとしても。
結ばれる瞬間だけは彼の温もりを感じ、知ってしまえばその幸せを胸に、アリエッタは生涯生きていけるだろう。
それではリリスの願いを本当の意味で叶えたことにならない。
だったら見ず知らずの男に穢され、身体と心を引き裂かれてしまえばと思ったのだ。
「……私、レオでは傷付かないの。だから駄目なの」
涙し、頭の中もぐちゃぐちゃで。
冷静ではいられなかったアリエッタは余計なことまで口走ったのにも気付いてない。
感情のまま吐露した。
「私はもっと傷付かなきゃならないのに……。きっと幸せになってしまう……。あなたをあ……愛し……」
最後は嗚咽に変わり。
「ごめんなさい……」
アリエッタは再び邸を去ろうと、呆然と佇むレオの脇をすり抜けた。
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