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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──



 がくり、と膝から落ちそうになったアリエッタの腰を支える。


 ようやく唇が離れ、新鮮な空気を肺に吸い込むアリエッタは息が乱れていた。


 涙目で見上げるレオは完全に怒りは消え去り、慈愛に満ちた表情で。


 どうしてそんな顔で見られているか困惑し、アリエッタは言葉を失う。



「俺に抱かれたら幸せになるから駄目だと言ったな?」


 口走ってしまったことを改めて聞かれ、アリエッタは狼狽える。


「それは……」


「なら幸せになれ」


「え?」


「それも駄目だと言うなら、俺のせいにすればいい。俺が勝手にアリエッタを幸せにする」


「レオ……?」


 驚愕に見開いた眼を向けていれば、レオがアリエッタを抱き上げた。


 レオの腕の中でオロオロとするアリエッタをレオは寝台に丁寧に置き、アリエッタの手の甲を包み込むよう持ち上げ、片膝を寝台に乗せたレオはまるで騎士がするようなキスを甲に落とした。


「アリエッタは黙って俺を受け入れればいい。すべては俺の身勝手だ。いいな?」


 掠れる声で囁かれ、どきりとしたのも束の間。


 自らも寝台に乗ったレオはアリエッタをそっと横たえた。






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