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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──
額や瞼、涙で濡れる頬や唇に、レオはリップ音を鳴らして口づけていく。
駄目だ。止めなければ。レオに抱かれるのは、リリスへの裏切りだ。
解っているのに心が打ち震え、新たな涙を生む。
──幸せになれ。
そんなこと誰にも言われなかった。望まれなかった。
自らの罪をも背負おうとしてくれているレオの優しさに、喉の奥が詰まるほど泣けてくる。
哀しみからでない涙は初めてだった。
レオの心は他人のものだ。解っている。
これは赦されざる行為だ。それも解っている。
それでも……赦されなくても、たとえ地獄に堕ちても、彼の腕から逃げるという考えは無くなっていた。
一夜限り……一度きりでいい。
レオの腕にいたい。
心の奥底で望んでいたのはアリエッタだ。
──ごめんなさい……ごめんなさいリリス。
あなたが望むなら、同じだけ傷付いても構わない。腕でも顔でも……全身焼かれてもいいから、今だけは忘れさせて……。
アリエッタは罪の意識を打ち震える心に紛らせ、ただレオに身を委ねた。
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