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隠匿の令嬢
第2章 温室での密会



 アリエッタの瞳にレオの伏せられた瞼が映る。長い睫毛も髪と同じ色だった。


 彼のつけているパルファムだろうか。シトラスの爽やかな匂いが鼻先を掠めた。


 漆黒の双眸を隠す長い前髪の奥、アリエッタは眼を見開く。頭は真っ白になった。


 レオは何をして、自分の身に何が起こったか理解出来ないまま、レオは名残惜しそうに舌先でアリエッタの唇を軽く舐め、離れる。


「ではお礼は戴いたので」


 そう言って彼は立ち上がる。


「ああ、そうそう。植物の世話は庭師がしているのでお気遣いなく。アリエッタ。いい絵をもっと描いてくださいね」


 それだけ言い残し、レオは立ち去った。


 暫しアリエッタはベンチに根が生えたよう動けず、ややあって全身から血が引き潮の如く引いていく。


「私……彼とキ……」


 アリエッタは冷たい指先で唇を押さえる。


 襲ってきたのは憤りや恐怖ではなく、滾るような罪悪感だった。






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