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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──
この先はアリエッタにとって未知の領域。
恐れや不安もあったが、引き返せないところまできているのは解っていた。
レオが手早く上着とシャツを脱ぎ捨てる。大人の男の裸など当然見たことはない。アリエッタは眼のやり場に困りつつも、晒された肉体美から気がつけば眼を逸らせなくなっていた。
幾度か抱き締められたことのある逞しい胸板はほどよい厚みがあり、その下の腹筋はどの彫刻よりも美しい。
無駄なものをすべてそげ落とし、あるべきもののみを携えている。
もしここにスケッチブックがあったなら、迷わず鉛筆を走らせていただろう姿。
それほど均整がとれていて、またオイルランプの柔らかな灯りが陰影をつけ艶かしい。
しかしトラウザーズをくつろげ、窮屈そうに中で収まっていた彼自身を引き摺り出すと、アリエッタは小さく息を呑んで慌てて視線を逸らした。
逸らしたからといって見なかったことにはならない。
絵描き故の特色か、アリエッタは一度見てしまうとその造形を知らずと焼きつけてしまうのだ。
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