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隠匿の令嬢
第10章 真夜中の逃亡と──
「そんなものいいから」
深く息をついたレオに一蹴される。
「でも、私のお仕事だから」
完全に目を醒ましたレオと会わせる顔がない。少なくとも今の落ち着かない気持ちのままでは。
「仕事? ……だったらこれからは俺の傍にいるのが仕事だ」
レオは甘やかな微笑をアリエッタに見せ、再び夢の中へと入っていったようだ。
アリエッタをしっかり抱き締め、スースーと寝息を立て始めるレオの腕の中。
アリエッタはなぜかもっと落ち着かない気分になった。
レオの傍にいるのが“仕事”──?
それはどういう意味なのだろうか。
仕事の意味はすぐにアリエッタの知るところになる。
のそのそと起き出したレオは身支度を整えるとジョシュアを呼びつけ、アリエッタの荷物を自室へと運ぶよう指示をしたのだ。
いつになく上機嫌の彼はジョシュアと家具の配置を相談したり、多少入れ替えようかと言い出してみたり。
そんなレオと、彼の指示で忙しなく動き回る使用人たちを、どこか遠くで見ている思いのアリエッタはより儚い存在であった。
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