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隠匿の令嬢
第11章 夜会での邂逅


 アリエッタは初めて結ばれた夜から何度もレオに抱かれてきた。ときに横暴に、ときに優しく。


 行為の最中に恥ずかしいことを強要され、戸惑いを見せたりはするものの、行為自体は一度たりとも拒まなかった。それが与えられた仕事だから、と。


 リリスへの裏切りだという後ろ暗い思いは常にあるが、レオの──彼専用の“娼婦”にまで身を堕としてしまった現実がある種の逃げ場となっていた。


 けれど抱かれたあと、我に返るといつも知らずに『ごめんなさい』と誰に言うでもなく、心の中で呟いていて。


 純潔を失い、幾度もリリスを裏切り、神へもリリスへも空々しく聴こえるだろう謝罪の言葉。


 しかし呟かずにはいられない。もう赦してはもらえないだろうが。




 ただこの状況をどこか達観してしまっている自分もいた。


 レオは整然として見えても、若く健康な男だ。欲望のはけ口が必要なときもあるだろう。そこに都合よく自分に想いを寄せる女が傍にいるからで、アリエッタを抱く意味はそれ以上でも以下でもない。


 アリエッタに飽きるか、邸を出るか、レオが想い人と結ばれるか──。


 いずれにせよ、この関係の終焉はそれほど遠くはないと、アリエッタには解っていた。






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