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隠匿の令嬢
第11章 夜会での邂逅


 だからアリエッタはいくつか決めたことがある。


 もうレオの前で涙は見せず、努めて明るく振る舞おう。そして二度と想いは口にしない、と。


 彼の重荷になりたくなかった。煩わせたくなかった。


 アリエッタの想いを知り、それでも二人の関係は主と従だと暗に言われ。それが彼の答えなのだから。


 レオに抱かれているとき、ただ傍にいるとき、彼のことを思い出したとき。ふいに引き裂かれるほど辛く、涙が出そうにはなる。


 そういうときはアトリエに籠り、一人涙した。



 彼の前で涙はなんとか堪えられるが、耐えられないのは離れたくないと思わせる体温だ。


 レオに包まれ眠るのは最初こそ慌てたが、とても安心するものになっていた。


 その安心に馴れてしまうのが怖かった。離れられなくなりそうで、ずっとここに居たいと願いそうで。


 無邪気な寝姿にも心が締め付けられる。一生彼の寝顔を見ていられるのではと、馬鹿げた夢を見てしまいそうで。



 アリエッタは願わないよう、夢見てしまわないよう、寝台の片隅でレオに背を向け、自分を抱き締めて眠る。


 アリエッタのここ最近の癖だった。






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