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隠匿の令嬢
第11章 夜会での邂逅



 アリエッタは動揺を微塵も見せず、優美に笑う。


「ええ」


 短く答え、レオの部屋から出ようとすると。


「わかった。俺の好きにさせてもらう」


 背中から追いかけてくる言葉に、また冷や水を浴びせられた。





 アリエッタはアトリエに駆け込み扉を固く閉じると、その場にしゃがみこんでしまう。


 両手で口を塞いで嗚咽を押し殺しても、涙だけは堪えられない。


 レオが他の女性と居るところを想像するだけで、こんなにも苦しくなる。


 それに今さらアリエッタにわざわざ他の女性とのことを匂わせなくても、レオに想い人がいるのを知ってるのに。


 レオには真の理由を告げなかったが、大勢の人が招待されるだろう夜会で、アリエッタとの関係を勘繰られ、彼の幸せの妨げになりたくなかったのだ


 


 今まで何があっても涙を堪えられてきたのに、恋は人を脆くするものなのだろうか。


 アリエッタは涙を止められるまで、暫く時間がかかってしまった。





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