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隠匿の令嬢
第11章 夜会での邂逅
レオが別の女性をエスコートすると言ったとき、嫌だ、と本心では叫んでしまいたかった。
誰かに誘われても行かないでと縋れたら、どんなに楽かとも思う。
恋人でもなんでもないアリエッタに彼を止める資格も、嫉妬する権利もないのに。
アリエッタはようやく理解する。あのときリリスが言っていたことは、何ひとつ間違いはなかったのだということを。
恋心を自覚し、愛する人の体温を知ってしまったことで愛しさが募り。
愛情が募れば募るほど、心が切り刻まれてしまう。
レオに純潔を捧げたことに後悔はない。あの瞬間、紛れもなく幸せであった。
だがその後、待ち受けていたのは想像を絶する苦痛。皮肉にも、リリスが望んだ通りの結果になり、自嘲する。
他者の色彩を感じられるが、己の色彩は鏡を通しても見られない。
しかしきっとアリエッタの漆黒の双眸よりも仄暗い黒に染まっているだろう。
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