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隠匿の令嬢
第2章 温室での密会
アリエッタはアングルを変えつつ、一時間もずっと描いていた。その15分も前からレオがすぐ傍でアリエッタを眺めているのにも気付いてない。その集中力たるや、鬼気迫るものがあるくらいだ。
ニーナに以前言われたことがある。隣で殺人が起きていようとも、アリエッタは絵を描き続けるだろう、と。
流石にそれはないわ、と否定したアリエッタだったが、ニーナが正しいかもしれない。
レオに気付いたのは、アリエッタが他の場所に移動しようと思い立ったときだった。
「あ……」
「ようやく気付いてくれましたね」
言葉を失うアリエッタにレオは悪戯っぽい笑みを投げる。どこから持ってきたのか椅子に腰掛け、長い脚を優雅に組み、腕を伸ばせば触れられそうな位置にいた。
「すごい集中力ですね」
「い、いつからそこに……?」
「少し前からですよ」
レオは三日前もそうしたよう、立ち上がってアリエッタに手を差し伸べる。
アリエッタは逡巡し、地面の上を掠めた手をそっと乗せた。
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