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隠匿の令嬢
第2章 温室での密会
乗せられた手はすぐ離し、自分で立ち上がる。レオの掌に残ったのは温室の鍵だった。
「ご厚意を無下にしてしまう無礼、お許しください」
アリエッタの謝罪は手と鍵を貸してくれようとしていた両方へのもの。どちらもアリエッタには不相応だから。
言うべき台詞は考えてあり、か細いながらも詰まらず言えた。
アリエッタは視線を伏せたまま一揖し、立ち去ろうとした。しかしレオに手首を掴まれ阻まれる。
「待ちなさい、アリエッタ」
「お離しください」
レオの手から逃れようともがくがビクともしない。
「離しません。あなたはもっと自分の欲望に正直になるべきです」
「欲望など私には……!」
「あるはずです。ここの花々を白いスケッチブックいっぱいに描きたいでしょ? そのあとはキャンバスに油絵の具で溢れる感情を表現したいとも思っているでしょう? 違いますか?」
怜悧な視線に射抜かれ、アリエッタは咄嗟に顔を背けた。
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