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隠匿の令嬢
第11章 夜会での邂逅



「どうしてとは?」


「だって私がいなくても、大勢の人から祝福されるわ。パートナーにだってレオなら困らないでしょ?」


 寧ろアリエッタがいたほうが困るはずだ。


「そうだな。国中から集まる人々が俺の誕生日を祝うために遠方からも来てくれるだろうな。だがそこにアリエッタがいなきゃ意味がない」


「ッ──」


 アリエッタは心臓が止まりそうになる。


 勘違いしそうになる甘い言葉を吐かないで欲しい。アリエッタが傍にいるのは仕事──“慰み者”だと言ったその口で。


 レオにしてみれば甘い言葉は言い馴れてるのだろう。どうすれば女の気持ちが動くのかも知り尽くしているだろう。


 最終的に折れるのはやはりアリエッタだ。惚れた弱みというやつだ。アリエッタは覚悟を決める。


「わかったわ。行くわ。でもひとつだけ約束して欲しいの」


「なんだ?」


「誰かに私のことを訊かれても、友人だと紹介して」


「……わかった。約束する」


 事実はどうあれ、友人ということにしておけば噂が立ってもどうとでもなるかもしれない。


 それでも身分の低い女をパートナーとして連れて行くのは醜聞になるであろうが、欠席して彼の立場を危うくさせるよりはましだ。


 最善ではないが次善の策でやり通すしかない。





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