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隠匿の令嬢
第2章 温室での密会
言い返せなかった。その通りだったから。
アリエッタにも欲望はある。──罪深いことに。
しかし一生をかけて自戒し続け、欲望を押し込めて生きていかねばならない。それが自らに課した足枷だ。罪深いアリエッタには軽すぎるくらいの。
「私は……」
「いいですか、アリエッタ。私はもう決めたのです。あなたにこの鍵を貸し、絵を描いてもらうと」
「どうしてそこまでしてくださるんですか? 見ず知らずの私になぜ……?」
「そうですね……。アリエッタが私の“色彩”に惹かれたよう、私もあなたの絵に惹かれてるんです」
見てもないのに? と問おうとした。しかしレオに強く引っ張られ、腰を抱かれて息を呑む。
手首を握られていなかった方の掌にレオの掌が重なり、指が絡まる。間に冷たく硬い感触がある。大きさからいって鍵だろうが、それを気にする余裕はない。
「一度私の手に戻ってしまったので、またお礼を貰う必要ができましたね」
一瞬、レオの琥珀色の双眸に凶暴な焔がちらついた気がした。
何が起こるのか三日前の経験から頭を掠めたけれど、すでに唇を塞がれたあとだった。
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