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隠匿の令嬢
第11章 夜会での邂逅



「アリエッタ、こっちに来て」


 そよそよと吹く風を浴び、疲れと火照りを癒すアリエッタにレオがバルコニーの端に誘う。


 そして壁際までアリエッタを追いやると、唐突に唇を塞がれた。


「んんっ!?」


 驚きのあまり瞼を伏せるのも忘れ、くぐもった声を上げる。やめて、とレオの肩をパシパシと叩くと、解放される。


「レ、レオ! こんなところで何するの? 誰かに見られでもしたら……」


 バルコニーの窓もカーテンも開け放たれ、すぐそこで歓談の声や音楽の音色が聴こえるというのに。


「少しくらいいいだろ? 今日、好きにしていいと言ったのはキミだろ」


「言ってないわ、そんなこと」


「いーや、言った。昨日の会話を覚えてないのか?」


「昨日って……」


 思い出してみると、レオが最後にアリエッタの背に向かって『好きにさせてもらう』と言っていた。だがアリエッタからその言葉を発したわけではない。


「無言は肯定と取るものだ」


 無茶苦茶な彼の理論は健在だ。アリエッタは前にもこうして無茶なことを言い出すレオを思い出し、呆れてクスリと笑ってしまった。




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