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隠匿の令嬢
第12章 檻の邸



 どうしてそれを知っているのか。その疑問が浮かぶ余地がないほど、驚愕する。父やリリスも同様に驚いた様子である。


 周囲にいた人々もにわかに騒ぎだす。


「それは……」


「ああ、公爵流の冗談ですか?」


 レオだけがどこまでも冷静な口調だ。動揺するアリエッタは気が付かない。そんな彼の瞳が冷え冷えとしているのに。


「冗談なんてとんでもない。あまりに見違えてしまって……一瞬誰だか解らなかっただけですよ」


「なるほど、そうでしたか」


「ええ。アリエッタ、久しぶりだね」


 わざとらしく親しげに親子の再会を演出し、父がアリエッタを抱き締める。


 何年も……いや、ほとんど記憶にない父の抱擁は末恐ろしさを伴った。


「どういうことだ」


 そう耳打ちされ、背中に冷たい汗が伝う。震えるアリエッタをリリスも抱擁してきた。


「お姉さま、ご無沙汰しております」


 リリスもまた「裏切り者」と周囲に聴かれない囁きをアリエッタに残した。






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