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隠匿の令嬢
第12章 檻の邸

暗い闇がアリエッタの足元から這い上がり、彼女を呑み込もうと蠢く。
ズル、ズルっと人の手に似た闇が両足に絡み付き、胴や腕、髪の一本一本に至るまで這い。気持ちの悪い感触が喉を締め付け、すべてを闇に染め上げる寸前。
レオの温かく逞しい腕が掬い上げる。
「実は彼女。今は私の邸に身を置いてるんです」
ぐっと腰から引き寄せられ、レオの体温を感じた場所だけが闇は散り散りに霧散する。
──いけない、このままではレオまで黒に染まってしまうわ。
罪と対峙し、レオの鮮烈な色彩を穢してしまうのではと恐怖に駆られ。
突き放したいのに力が入らないのが悔やまれる。
「アリエッタが殿下のお邸に……?」
「はい」
「なぜそのようなことに? アリエッタはその……本人の希望で寄宿舎に入れておりましたが」
周囲に強調したいのか、公爵の娘であるアリエッタが寄宿舎住まいをしているのはあくまでもアリエッタの意志にしておきたいらしい。
事実はそうではないが、アリエッタは口を開くことも出来ないし、声が出たとしても反論する気はなかった。

