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隠匿の令嬢
第12章 檻の邸

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王城のゲストルームでアリエッタはソファーの座面に腰を降ろし、茫然としていた。
ゲストルームも贅〈ゼイ〉を凝らし、重厚ながらも華やかさに溢れ、調度品ひとつ取っても洗練されていた。
だが今のアリエッタに周りの風景は視界に入ってない。父の迸る威圧感とリリスの滾る憎悪に当てられ、身体がひどく重く冷たい。
──あの邸に来週行くのね。
レオの申し出を父は受け入れた。王太子に逆らえる人物など国には一握りしかいない。無下に出来るはずはない。
「アリエッタ。お茶を持ってきた。呑むといい」
疲れた彼女を休ませるという名目で、レオも父とリリスとの会話のあと夜会を抜け出した。
主賓が途中で抜け出すのはあまり良くないだろうが、レオはあとは皆好きにやるさと言って一緒に来てくれたのだ。
「ありがとう……」
ぼんやりとしているも、レオから紅茶を受けとる。まだ震えている手の中で、カップがソーサーの上でカタカタと踊る。
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