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隠匿の令嬢
第12章 檻の邸
王妃によって連れてこられたのは、こじんまりとしたキッチンだった。棚には磨きあげられた調理器具や食器が置かれ、使い込まれたコンロや調理台が据えられ、狭いながらも料理が出来る環境は整えられている。
「私ね、お菓子作りが趣味なの。嫁いで来たころは好きなようにお菓子が作れなかったのだけど、王さまが王位に就かれてからはたまに作ってるのよ」
王妃はエプロンを棚から取り出し身に付け、アリエッタにも渡す。
話によるとこのキッチンは王妃専用のもの。以前は王城の元からあるキッチンを使っていたのだが、使用人が気を遣うので王に頼んで専用部屋を設けてもらった、とのことだ。
「アリエッタもお菓子作れるのでしょ? レオから聞いてるの。ね、一緒に作ってくれない?」
最初こそ一国の王妃と二人きりという環境に戸惑い、緊張をしたが、彼女は容姿に違わず少女のように可愛らしく、親切で気さくな性格で、いつしか戸惑いも緊張もほぐれていった。
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