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隠匿の令嬢
第12章 檻の邸



「アリエッタ。手際がいいわね」


「いえ、王妃様こそ本当にお上手で驚きました」


 アリエッタが焼き菓子を作る傍らで、王妃はジャムやプディングを手際よく作っていた。


「あ、ねえ。もうひとつお願いがあるの」


 王妃は顔の横で手を重ね合わせ、小首を傾げる。


「はい、なんでしょう?」


「あのね……私のこと“お母さま”って呼んでくれない?」


 思わぬ頼みに固まる。そしてとんでもないと、小刻みに首を振る。


「そんな……畏れ多くて出来ません」


「お願い! 今日一日でいいの。私ね、本音を言うと女の子が欲しかったの。あ、レオに不満があるってわけじゃないのよ。ただもう一人生みたかったのだけど、残念ながら授からなくて」


 今度は胸の前で指を組み、アリエッタに懇願し、迫ってくる。


「王さまもレオも甘い物が苦手で。私が作っても食べてはくれないし、ましてや一緒にお菓子を作ってもくれないのよ。だから、ね? 一日だけ女の子の母親気分を味わいたいの」






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