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隠匿の令嬢
第12章 檻の邸
レオの性格が母親譲りだとの直感は間違ってなかった。
威圧感なく人を丸め込み、意志を通す手口は彼そのものだ。
どうにもこの手の性格に弱いのか、アリエッタは「は、はい……」と諦めにも似た気持ちで頷くしかなかった。
二人で作ったお菓子でアフタヌーンティーを摂っている最中も、ことあるごとに『お母さま』と呼ばせたがる。
王妃のティーカップが空になったときも──。
「あの……お代わりはいかがです?」
「ん?」
キラキラとした眼差しで期待を浮かべる王妃。
「お……お母さま」
「ええ、いただくわ」
無言の圧力を投げてくるものだから、尚質が悪い。
いつだったかレオに“兄上”と呼ばれたジョシュアの居心地の悪さが今になってようやく解る。
王族に対して家族のように振る舞うのは、これほど気がひけるものなのか、と。
しかし王妃は常に上機嫌で。それに水を差すのも悪いと、アリエッタは王妃といる限り『お母さま』と呼んだ。
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