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隠匿の令嬢
第12章 檻の邸



 すると王妃も立ち上がる。


「ええっ? もう帰ってしまうの? 今日一日はアリエッタの母親でいるつもりだったのに。ねぇ?」


「え……っと、あの……はい」


 同意を求められ、オロオロとしつつ頷く。


「なんの話です?」


「そのままの意味よ。あーあ、短い春だったわ」


 大袈裟に拗ねる王妃は少女のよう。その様子を見てレオは肩を竦め、王妃に近寄るとなにやら耳打ちをした。


 すると王妃がみるみる笑顔になる。


「それ、本当? 絶対よ?」


「私が約束を破ったことありますか?」


「ないわ、ない! どうしましょう! 王さまに教えてもいい?」


「お好きにどうぞ」


「そうするわ! アリエッタ、またいつでもいらしてね!」


 王妃はドレスのスカートをはためかせ、パタパタと走って行ってしまった。


 なにをそんなに浮かれていたのだろうか、と呆気に取られて眺めるアリエッタの腰を抱き「行こうか」とレオが笑いかけてきた。


 あまりに慌ただしく去っていってしまい、まともに挨拶が出来なかったことが気掛かりだと伝えても、レオは次に会うときでいいと強引に王城からアリエッタを連れ出してしまった。




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