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隠匿の令嬢
第12章 檻の邸



 ──ザキファス邸へ向かう当日。


 アリエッタは周りが拍子抜けするほど、普段通り穏やかな表情で朝を過ごしていた。


 ジョシュアをはじめとする使用人たちも、おそらくアリエッタがなんらかの事情を抱え、実家へ帰れないことは察しているだろう。


 ザキファス邸という立派な邸宅があるのに、長期休暇の間、一度として邸に戻る素振りを見せなかったのだから。


 代わる代わるアリエッタの元に来ては他愛ない話をしていったり、コックからはお菓子の差し入れがあったり、庭師からはたくさんの花が届けられたり。


 使用人たちはこれまでも皆優しかったが、コックや庭師までもがわざわざアリエッタを訪ねてくることはなく、力付けようとしているのは明らかだった。


 その一人一人に笑顔で対応していれば出発の時間が差し迫り、仕舞いには呆れたレオが最後の訪問者のキッシュたち庭師を追い出していた。







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