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隠匿の令嬢
第13章 知られざる秘密


 父の鋭い眼差しの奥にあるのは、娘に恋人ができるかもしれないと喜んでいるのではなく、王族と縁を結べるまたとないチャンスを狙う野望だった。


 疎み、隠してきたアリエッタであっても、父の立場をより確固たるものとする使い道がある──。


 それを喜んでいるだけだ。


 その考えを指し示すのは、父の双眸だけでなく色彩だ。


 黒が一層濃くなり、広がった。



 ──そうか。レオの狙いはこれなのかもしれない。


 レオは父の性格を見抜いていたのだ。権力にどこまでも貪欲で、野望の化身ともいうべき本質を。


 たとえこの先レオが真の想い人と結ばれようとも、一度でも王太子に見初められたアリエッタの値打ちは上がる。


 貴族の令息たちが興味を持ち、父に有効な縁談はいくらでも舞い込むであろう。
 

 レオはアリエッタの抱える恐怖まで見抜いていたのかもしれない。だからアリエッタの邸での立場をよくするため──それだけのために嘘までついたのだ。



 しかし歓喜する父の黒を押す勢いで広がる別の黒をアリエッタは感じとり、アリエッタはひとり戦慄く。






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