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隠匿の令嬢
第13章 知られざる秘密
リリスの腕の傷痕は彼女の心の傷でもある。
多少我が儘なところはあれど、明るく姉を慕うリリスを歪めてしまっのはアリエッタだ。
どれだけ悔やんでも、過去は変えられない。
愛する人にもすべてを知られてしまった。
「殿下はこれを見てもまだお姉さまをお傍に置きたいと思われますの!?」
耳を塞ぎたい。レオからの拒絶の言葉は何よりも辛い。
だがそれも罪の代償ならば──。
アリエッタは逃げ出したい気持ちをじっと堪え、意に反して耳を塞ごうとする腕を押さえた。
「……私の気持ちは変わりませんよ」
──今、なんて……?
レオの口から飛び出した台詞に、アリエッタは胡乱〈ウロン〉を抱く。
都合のいい空耳であろうか、とさえ思ってしまう。
「この傷を見て、まだそんなことおっしゃるの!? なんとも思われないのですか!?」
しかしリリスのヒステリックな叫びが現実だと物語る。
「同情はします。それから……少し安心しました」
「なっ!?」
リリスが驚くのも無理はない。この状況で“安心”などと言うのはどういう心境かと、アリエッタでさえ思わず信じられない気持ちでレオを見てしまったのだから。
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