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隠匿の令嬢
第13章 知られざる秘密
「あ、あの日……。アリエッタお嬢さまとリリスお嬢さまが2階のお部屋で話しているのを、偶然聞いてしまったんです」
こう切り出した彼女が語ったのは、アリエッタ自身記憶にないことだった。
近くに彼女がいると知らず、アリエッタたちが話していた内容。
それはリリスが厨房へ行きたい、と駄々を捏ねていたというのだ。
『厨房に行けばいっぱいお菓子があるのよ? お姉さまも出されるお菓子だけじゃ足りないでしょ?』
『リリス、駄目よ。決められた時間に出された物しか口にしちゃいけないのよ』
『嫌よ! 私もっと食べたいの! 意地悪するなら、お父さまに言いつけてやる!』
彼女の話を聞きながら、ふいに甦る記憶の断片。
「アリエッタお嬢さまはリリスお嬢さまを宥め、お止めになっておいででした。ですが──」
『これは冒険よ? お姉さまだってしてみたいでしょ?』
渋るアリエッタにリリスは甘美な誘惑をした。
毎日勉強やレッスンばかりで窮屈だったアリエッタにとって、蜂蜜より甘い極上の誘惑。
リリスが父に言いつけると言ったときより、心を動かす台詞に負けたのだ。
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