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隠匿の令嬢
第13章 知られざる秘密
「わ……私がアリエッタお嬢さまをお見掛けしたのは、厨房の入り口で立っておられるところでした」
『お姉さまはここで見張りをしてて。私がお姉さまの分までちゃーんとお菓子持ってくるから』
また記憶の断片が甦る。
──そうだわ。誰かに見つからないよう、リリスに見張りを頼まれたんだった。
どうして忘れていたのか。いや、そもそも記憶の断片も怪しい。
うっかりヤカンをひっくり返し、リリスに怪我をさせたのはアリエッタのはず。入り口で見張りをしていてどうやってリリスに湯を浴びせられるのだろう。
だが浮かんでくる記憶はなんなのか。
まだピースが足りない。だがこれ以上嵌めてはいけない……。警鐘がガンガン鳴って、心臓が胸を突き破りそうだ。
「アリエッタお嬢さまは辺りを気遣わしげに見ておいでで……。なにをなさっているかお声をかけようとしたときでした」
『きゃああぁぁぁぁ!』
耳に貼り付くリリスの悲鳴。悪夢の幕開けを告げる、恐ろしい声だった。
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