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隠匿の令嬢
第13章 知られざる秘密
思い出した……思い出してしまった。
ピースがカチンと嵌まり、完成した記憶。
そっとしておいて欲しかった。悪戯に不幸な人を増やしたくなかったから。
「私が頼んだの……。絶対に言わないでって」
必死だった。あの日もコックは泣き崩れていた。『どうしましょう……。リリスお嬢さま……赦してください……。私には母が……母が……!』と病床に臥せる母の未来を憂い、血の気を無くす彼女に口止めし、罪を被ることしかアリエッタはできなかった。
駆けつけた使用人たちに『私がしてしまったの!』と訴え、コックから注意を逸らした。
自分がやったことにすれば、コックは追い出されず、彼女の母も助かる。アリエッタならば父に素直に謝り、叱られる程度で済むはずだ、と。
しかしこの考えは甘かった。日々、辛く当たられ、恨み言を聞かされ。そうするうちにいつしか真実は奥底へと沈み、自分がやってしまったのだと思い込むようになった。
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