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隠匿の令嬢
第14章 束の間の幸福と崩落の足音
「あっ、なにするの?」
手を伸ばして取り返そうとするも、レオは高々と上げてアリエッタに届かなくさせてしまう。
「嬉しいのはわかるが、何時間読むつもりだ?」
「何時間だなんて……大袈裟よ」
せいぜい読み始めて数分というところだ。
「いーや。今まで来た手紙、放っておけば暗記するくらい読んでたじゃないか」
「それは……」
確かにそうだ。言い返せない。
長い間心を通わせられなかった反動で、手紙ひとつに幸福を感じずにはいられないのだ。
「そのしわ寄せを俺が喰らってる自覚はあるか?」
「しわ寄せ?」
レオに迷惑をかけたかと首を捻る。
満ち足りた気分のせいか、絵も格段に描く速さは上がった。これまで筆に迷いがあったのが嘘のように。
他に失敗らしい失敗もないはずだ。お皿を割ったりもしていないし、レオの執務の邪魔もしていない。
考え込んでいれば、レオが深々と嘆息した。
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