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隠匿の令嬢
第14章 束の間の幸福と崩落の足音



「もうっ! すぐ意地悪するんだから」


 はしたない連想をさせるのはレオなのに、まるで自分は清廉であるとの言い種に赤い顔で抗議する。


「アリエッタ」


 レオが再びアリエッタを捕らえる素振りを察し、後退り間一髪で逃れた。過去の学習で、レオのペースに呑まれるとあまり良い方向に向かわないからだ。


 するとレオは立ち上がって距離を詰めてくる。


「俺から逃げようとするなんて、いい度胸だな」


「逃げるだなんて……。わ、私そろそろ戻ろうかと思って」


 艶然と微笑む彼にアリエッタの警鐘が鳴る。寝台で見せる獣性をレオの背後に感じとり、自然と後退ってしまう。だが同じ距離だけ詰めてきて、また後退すれば、背に固い感触が当たる。四阿の柱だ。


 横に滑って避けようとするも柱に手をついたレオによって阻まれ、反対側も塞がれ囲われる。


「レ、レオ? 通してもらえないかしら」


 極力毅然としてみるも、アリエッタの双眸は泳いでしまっている。


「無理だな。俺が逃がすと思うか?」






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