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第14章 束の間の幸福と崩落の足音

「いけない──」と思った次の瞬間には唇が塞がれていた。噛みつくような口づけに、背筋が戦慄〈ｵﾉﾉ〉く。鼻腔を擽るレオから仄かに香るシトラスが、否応にも胸を高鳴らせる。


「んっ、んんぅ……っ」


　舌先が強引に入り込もうとするのを、唇を引き結んで阻む。だが脇腹を悪戯に撫でられ、擽ったさに緩んだ隙をつき、すかさず捩じ込まれた。


　尖らせた舌がアリエッタの舌を滑り、頬の裏側を擦られると力が抜けそうになる。だが降り注ぐ陽の光に理性を繋ぎ止め、パタパタとレオの肩口を叩いてやめてと訴える。


「や、やめ……レ、オ……んんっ」


　弱々しいアリエッタの訴えではレオを止められないので、唇を吸われる合間に喘ぎ喘ぎ声を出す。


「蕩けた顔してよく言うな。やめて欲しくないって本当は思ってるだろ」


「そんなこと……。と、とにかく駄目よ。ここ、どかだかわかってる？」


「俺の邸の庭、だな」


　あっけらかんと答えられても困ってしまう。解っているならやめて欲しい。







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