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隠匿の令嬢
第14章 束の間の幸福と崩落の足音
セドリックが去り、暫く経ってからだった。
再びジョシュアが扉を叩いた。
「レオ様。申し訳ありません」
常に礼儀を重んじるジョシュアが返事を待たずに部屋へと踏み込んでくる。ひどく焦っているようで、走ってきたのか髪も僅かに乱れていた。
「なんだ?」
「それが……アリエッタ様がその……」
「アリエッタ? 何があった?」
「と、とにかくサロンへお越しください」
ジョシュアの返答を聞くや否や、レオは椅子を戻しもせず執務室を飛び出す。
ジョシュアの様子で只ならぬ事態が起こっているのは明らかだ。
広い邸を駆け抜け、階段を何段も飛ばして走る。
そしてサロンに近づいたとき、開け放たれた扉から洩れ聴こえた声に思わず立ち止まった。
「やだぁ……、キッシュ、意地悪しないで」
「駄目ですって、アリエッタ様……。も、これ以上は……っ」
──なっ!?
自分だけしか知らないアリエッタの甘い声に、レオは驚愕で眼を見開いた。
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