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隠匿の令嬢
第14章 束の間の幸福と崩落の足音
ナキラも泥酔し動けないので、別の侍女に水を持ってこさせ、口移しで呑ませてやる。
以前も同じことがあったと、苦々しい記憶が脳裏を過る。あの時はニーナで今回はセドリック。あの二人に関わるとろくなことがない。
正気を失い酩酊するアリエッタを危うく劣情に駆られ、純潔を奪うところだった。
あの時の自制心の強さを褒めてやりたいくらいだ。
しかし箍〈タガ〉が外れた今、口腔に含んだ水が尽きてもなお吸い上げてくるアリエッタの柔らかな唇に欲情が暴走しそうになる。
「……アリエッタ。水を呑んだら少し休め」
酔った女を抱く趣味はレオにはない。熱くなる身体を抑え、アリエッタを引き剥がし、諭すように言う。
「は……ん、でも、熱いです」
潤んだ瞳で見詰められ、自制心がぐらりと揺れる。
「酔ったキミは質が悪い」
はぁ……と嘆息する。
否、酔ったときだけではないかと、月色の髪に指を通して握る。
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