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隠匿の令嬢
第15章 病みゆく心
アリエッタはニーナを宥めつつも、確かにこの香水の匂いには参ると、窓を薄く開けた。
「仕方ないわよ。とても珍しいことなのよね?」
「珍しいってもんじゃないわ! 異例よ、異例!」
「そうなの?」
「そうよ。普通は有り得ないわ。まぁね、ご訪問自体はよくあることよ。でも留学で、それも──」
ニーナが言いかけたとき、窓の外から馬車が走ってきたのが見え。それは他の学生たちも気が付いたようで、あちこちから悲鳴のような歓声が上がった。
「今日からだったのね……」
ニーナが深く嘆息した。
どうやら浮き足立たせるその元が到着したらしい。馬車の刻印も王家のものだ。おそらくは間違いない。
正面入口前に停車した馬車の扉を馭者が開け、レオが降り立つ。
そのレオに手を取られ、ひとりの女性が降り立った。
彼女の名はリンゼイ・バジェット──隣国の第2王女その人であった。
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