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隠匿の令嬢
第15章 病みゆく心
隣国カンターヌ。小国ながらも良質な宝石が多く採れる鉱山を有し、ラインハルトに出回る宝石の大部分はカンターヌから輸入されたものだ。
加工技術に優れる職人も多いらしく、国交の厚いラインハルトの技術者がカンターヌへと修行を積みに行くこともあるらしい。
そのカンターヌの第2王女であるリンゼイ・バジェットが、この度ラインハルトを訪れるという話をレオから聞かされたのは三日前の朝だ。
陽射しの気持ちいい朝で、ナキラたちが薔薇の咲き乱れる庭に朝食を用意してくれ、据えられた透かし彫りのテーブルを囲んでレオと食べていたときだ。
「そうだ、アリエッタ。暫くの間、邸を空けることが多くなりそうなんだ」
会話の合間。思い出したよう、何気ない口調でレオに告げられた。
アリエッタは一瞬、時間が止まる。
あまりにも突然で、毎日をレオと過ごすことが当たり前になっていたアリエッタは、その意味を理解する前に衝撃だけが襲ってきた。
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