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隠匿の令嬢
第15章 病みゆく心
ここは建物の中で、決してレオとの距離は近くない。それなのにどうしてだろう。なぜ見逃しはしなかったのだろう。
レオがリンゼイを見たときだ。彼の眼差しはとても優しく。そう、あれは──愛しい者を見る瞳だった。
女の直感というものが存在するならば、まさにそれだろう。
レオが言っていた想い人。それはリンゼイだったのだと、アリエッタは直感した。
心が波立ち、大渦を起こす。渦中にいるアリエッタを溺れさせようと、荒れ狂っていた。
「お姫様のご到着ね。それにしてもレオナルド様も大変ね。ずっと付きっきりなのよね? セドもそのせいでレオナルド様の執務代行しなきゃってブツブツ言って……って聞いてる?」
「え? えぇ、聞いてるわ」
嘘だった。ニーナの声は肌を滑って流れていっていた。
アリエッタの目の前は真っ暗で、気を抜けば卒倒しそうでもあった。
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