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隠匿の令嬢
第15章 病みゆく心



 アリエッタは適当な本を選び、紙を広げてランプが照らす机に独り向かう。その手にはインクを浸していないペンが握られたまま。


 急ぎのレポートなんて嘘だった。二人を前に笑顔で居続けるのが限界だった。


 笑えているだろうか、変に思われていないだろうか。ほとんど頭に入らない会話の内容を耳に流し込み、考えるのはそればかり。


 だが視覚は異常なまでに正常で。レオとリンゼイが微笑み合う姿が焼き付いている。


 視界の端に映る、決して自分に向けられることのない、レオの切なそうでいて懐かしむような眼差しまではっきりと。


 レオがリンゼイのことを言おうとしたのを遮ったのも、彼の口から直接聞きたくなかった。


 そんなことをされたら泣いてしまう気がした。


 好きになってはいけない相手を愛してしまった。リンゼイだと知ってからも、愚かにも愛する気持ちは積み上がっていく。


 アリエッタはいつまでも根が生えてしまったよう、図書館から出られなかった。







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