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隠匿の令嬢
第15章 病みゆく心
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王城のレオの私室は代々の王太子が使ってきた部屋だ。陽当たりがよく、一際豪奢なその部屋に訪問者が来たのは、リンゼイがアッシュブラン邸を訪れた翌々日のことだった。
「そろそろ来るんじゃないかって思ってた」
「執務が一段落したからね。それよりもなぜ黙ってたの?」
訪問者──セドリックが不機嫌そうに訊ねてくる。
「黙ってるもなにも、話すほどのことじゃないからだ」
「だからって! ……あんたが逢えばわかるって言ってたわけがわかったわ」
セドリックは額に手を当て、そのまま髪を掻き上げる。眉間に深いシワが寄っているのは、不機嫌だけでなくレオを心配してのことだろう。
「……ったく。言ってくれてもいいのに。で、大丈夫なの?」
「なにがだ?」
「なにがって……!」
悠然とするレオを睨み、セドリックは嘆息してから傍にあるソファーにどかりと座り込んだ。
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