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隠匿の令嬢
第15章 病みゆく心
(──え?)
アリエッタは唐突に起こった現象に瞬いた。眼を擦り、再度テーブルに並べる絵の具を見遣ると元に戻っている。
(今、一瞬色が……)
アリエッタに起こった現象。それは絵の具も周りの景色さえ色味を無くした気がしたのだ。
匂いや味に敏感な人がいるよう、アリエッタは色に敏感だ。
赤ひとつにしても黒であっても、微妙な色合いの違いを見分けられる。
そのアリエッタが色が見えなくなるはずない。
いや、あってはならない。
アリエッタを慰めてきたのは絵と、そして溢れかえる色彩なのだから。
だがこの現象はこの後頻繁に起こることになる。
アリエッタが不安定になればなるほど、淋しさを感じれば感じるほど。
まるで世界がアリエッタを拒絶しているかのよう、またはその逆であるかのよう。
けれどもそうなっても、アリエッタは誰にも胸の内を明かさず、いつも以上に笑っていた。
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