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隠匿の令嬢
第15章 病みゆく心
「レオナルド様とリンゼイ様。いつ見てもお似合いですね」
「ええ、本当に」
「やっぱりあの噂は本当かしら」
「噂って?」
「だから、ほら。お二人がご婚約されるって──」
いつの頃から学生たちの間でその噂が立ったのは、隣国の王女が留学してくるとの情報が流れ、好機だとばかりに令息たちが身だしなみを華やかにし、けれど見込みがないと元通りの装いに落ち着いた頃だ。
まことしやかに囁かれる噂がアリエッタの耳に届けられたのは、ニーナからであった。
「他から面白おかしく聞かされる前に言っておいたほうがいいと思って。アリエッタはレオナルド様からなにか聞いてない?」
レオがリンゼイ王女と婚約──。
頭で反芻させると、ずっしりと重たい鉛が胃に落ちる。
だが笑顔がアリエッタの唯一の表情であるかのよう、崩さない。
「いいえ、なにも聞いてないわ。そもそもレオと話せてもないもの」
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