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隠匿の令嬢
第15章 病みゆく心



 レオが邸に帰ってきたのはリンゼイを招いて以来ないのだ。広い敷地の学校でもそうそう滅多に逢いもしない。レオとゆっくり会話をする機会がないのだ。


 たとえ出来ていたとしても、アリエッタに重要な話をするかも疑わしい。


「ねぇ、アリエッタ。あたしの前でくらい無理しなくていいのよ?」


「無理なんて……。どうしたの、急に」


「アリエッタはレオナルド様のこと、好きなんでしょ?」


 ニーナの新緑色の双眸がじっと見詰めてくる。アリエッタは答えに窮しかけたが、緩慢に首を振った。


「誤解よ、ニーナ。どうしてそう思ったかわからないけど、私とレオは邸の主と居候の関係よ。モデルはしてもらっているし、とても素敵な方だけど、そんな感情はないわ」


 きっぱりと言い切っても、ニーナは胡乱な眼差しだ。


 上手く隠してきたつもりであるが、ニーナとは幼少時よりの付き合いだ。勘づかれていてもおかしくはないのかもしれない。


 しかし認めるわけにいかないのだ。




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