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隠匿の令嬢
第15章 病みゆく心



「お仕事、大変なのね」


「仕事? なんの話だ?」


「え……だって。やることがあるって」


「ああ、ある。だが仕事じゃない」


 レオは腰を屈め、アリエッタの膝裏に腕を差し込むと、横抱きに抱き上げた。


「キミを抱くための時間だ」


 間近に迫ったレオの美貌が距離を詰め、キスが降ってきた。


 驚愕で瞼を閉じることも忘れ、アリエッタは月色の長い睫毛を震える瞳で見詰める。


 薄く開かれたレオの琥珀と眼が合い、慌てて痛いくらい瞑る。


 ぬめる舌が唇を舐め、ゾクリと背が戦慄く。


「ん……、ふぅ……ん」


 歯列を割って滑り込んできた肉厚の舌の感触に、揺られながら胴震いが起こる。


 クチュクチュと唾液が絡む音がするなか、背中に柔らかな感触を受ける。──寝台だ。


 アリエッタはどきりとし、レオの胸を押した。


「待って……」


 濡れる唇で告げ、アリエッタは見下ろすレオを正視できない。





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