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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る


 その日、鍵を使って入ろうとすれば既に開いていた。


 気付かぬうちに傍で見ていられるのも困るが、最初からいると解って入っていくのも躊躇われる。


 今日はやめておこうと踵を返しかけたとき、なりを潜めていた雨雲が騒ぎだし、いっぺんに雨を降らし出した。


 雨季にはよくあることだが、迂闊にも雨具を持ってくるのを忘れていた。このままでは濡れ鼠になってしまう。それにスケッチブックだってダメになる。


 アリエッタは温室に飛び入った。


 さっきまでは晴れていたのに──と、アリエッタはガラスの屋根を貫く勢いの雨に溜め息を落とす。


 こういう雨のときは暫く待てばやむことが多い。少し濡れてしまったドレスを払い、スケッチブックの濡れも確認する。


 咄嗟に身体で庇ったのでほとんど濡れておらず、ホッと息をついた。






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