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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る
アリエッタは最初扉のところで雨がやむのを待っていた。しかし一日だって無駄に出来ない。
学校の他の場所だって描きたい。休日は近くの野原や森にだって行きたい。
残された時間は刻一刻と迫っている。
どうか気付かれませんように……と願いつつ、周囲に注意を払ってまだ描いてない場所を目指していると、丸テーブルや透かし彫りのベンチが近付くにつれ、雨音に混じって人の声がしてきた。
「だから! あたしにこの雨の中出て行けってどういうことよ!? 風邪でも引いたらどーすんの!?」
「知らん。お前が勝手に着いてきただけだろ。俺は頼んでないし、着いてくるなとも言ったろ」
「まっ! 小憎たらしいったらないわね!」
『あたし』……? でもあの声……男の人のものよね? それに『俺』? あの声って……。
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