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隠匿の令嬢
第16章 灰色の世界



 レオはリンゼイのことを愉しく語りながら、隣に座るアリエッタの髪を指に絡ませ遊んでいる。


 時々、とても酷い男なのでは……と思ってしまったりもする。


 レオはアリエッタの気持ちを知ってて、夜毎アリエッタを抱き、最後は本当に結ばれるべきであるリンゼイの元へと行ってしまうのだから。


 レオを嫌いになり、この艱苦〈カンク〉から逃れられたらどんなにいいか。


 だが愛しさというのは無くそうと思って無くなるものではない。寧ろ無理に蓋をしようとすれば飽和し、激流の如く溢れてしまうのだ。


「あと来週なんだが、ジョシュアと出掛けなくてはならないんだ。その間……数時間だけ、王女とここで過ごしてもらえないか」


「私が王女さまと?」


「知り合いは多少出来たには出来たが、頼める人がいなくてな。いいか?」


「ええ。私でよければ」


 淀みなく答えながら、アリエッタは気鬱さを覚えてしまった。





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