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隠匿の令嬢
第16章 灰色の世界
一時的にではあるが、度々色が見えなくなってから、アリエッタは仕上げを急いでいた。
漠然とではあるが、残された時間が少ないように感じていたからだ。
だがこれほど早くすべての色が無くなってしまうのは予想外で、あとほんの数箇所筆を入れなければならないというところで、この有り様になってしまった。
「これだけは必ず……」
また独りごちて、アリエッタは瞼を伏せた。
初めて自分から誰かを描きたいと思い、描き始めたのだ。色が無くなったからといって、諦めたくはない。
レオも完成を楽しみにしてくれている。恩のあるギルデロイもだ。
そしてアリエッタ自身のためにも完成させたい。
おそらく最後の作品になるであろうレオの肖像画を、どんなことをしてでも描きあげたいのだ。
「レオ……。もう少しだけ私に時間をください」
再度独りごつアリエッタは肖像画のレオに小さく頭を下げた。
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