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隠匿の令嬢
第3章 肉食獣は紳士の仮面を被る
アリエッタが首を傾げるのも無理はない。会話だけ聴いていれば男女のそれと思うだろうが、声は男二人のものだ。
『あたし』と言った声は聞き覚えはない。だが『俺』と言ったのは紛れもなくレオの声。
アリエッタは近付いて重なる葉の隙間から窺う。そこにはレオと女性と見紛うほど美しい男性がいた。
ワインレッドの長髪をひとつに束ね、レオと同じくらい長躯の男性は、居丈高に座るレオの傍に立ち激しく抗議していた。
「このお茶やお菓子だってあたしが用意したのよ! あんたに頼まれて!」
「そうだな。でもそこにセドリックの文字はないぞ? つまりセドがここにいる必要はないってことだ」
「いいじゃない、あたしがいたって」
「よくない。いいから彼女が来る前に早くかえ……」
レオがふいに視線を投げた先にアリエッタが佇んでいて、アリエッタがしまったと思うのと同時にレオは片手の中に深く顔を埋めた。
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