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隠匿の令嬢
第16章 灰色の世界
アリエッタはまずリンゼイの希望で邸を案内した。
サロンやリビング、図書館や談話室やゲストルーム。客人を招く部屋をひとつずつ回る。
「どのお部屋も素敵ですね。殿下のご趣味の良さが窺えますわ」
「そうですね。あ、でも。ジョシュアさんもしつらえるとき、手伝われたそうですよ」
「ジョシュアさんが? そうなんですね!」
リンゼイはアリエッタが拙い説明をしても機嫌を損ねたりはせずにこにことし、きちんと説明できたらより笑顔を見せてくれる。
「アリエッタ様のお部屋はどちらにありますの? 良ければお邪魔しても構いませんか?」
「私の部屋、ですか」
どきりと胸が跳ねる。リンゼイはレオと同室なのを知らないのであろう。
まさか言うわけにもいかず、以前使っていた部屋はドレスなど片付けられ、読んでいる本や使う道具も置かれてない。
本や道具なら誤魔化せるが、万一クローゼットを開かれたら、使っていないとばれてしまう。
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