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隠匿の令嬢
第16章 灰色の世界
次に行った花壇ではキッシュが作業をしていた。
使用人が客人の前に出るのはあまりよしとされないので、リンゼイを認めたキッシュが慌てて荷物を片付け、引っ込もうとするのをリンゼイが呼び止める。
「そのまま作業を続けてくださいな」
「でも……」
「いいんです。少しこちらを見させてもらいますわね」
「は、はい」
さすがのキッシュも王女相手には恐縮しているようだ。
「王女さま。彼はキッシュです。若いですが、とても優秀な庭師なんですよ」
アリエッタはキッシュの横に並び立ち、紹介する。
刈り込みの技術は年配の庭師に劣るが、花の知識なら負けてはいない。そのこともリンゼイに教えると、キッシュは嬉しそうに、でもやはり恐縮する。
「まあ! でしたらぜひ一緒に見て回ってくださらない? こちらのお花、珍しいものが多くて、興味深いですから」
リンゼイはそこから見渡せる花々に眼を遣り、感嘆している。
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