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隠匿の令嬢
第16章 灰色の世界




「お茶の準備が整いましたので、バルコニーで召し上がれませんか」


 キッシュの説明があるうち席を外していたナキラが呼びにくる。


「ありがとう。王女さま、行きませんか?」


「そうですね。キッシュ、とても有意義な時間でしたわ。どうもありがとう」


「いえ」





 キッシュと別れ、邸に戻ってバルコニーでテーブルを囲む。


 何種類も用意されたお菓子を少しずつサーブし、リンゼイの前に置く。


「美味しそう! 私、甘い物大好きなんです」


 リンゼイは澄んだ声を弾ませる。本当に好きなのか、生クリームのたっぷり乗ったケーキを頬張ると、顔を綻ばせる。


「ラインハルトに来てよかったわ。カンターヌのお菓子も美味しいですけど、こちらで戴くほうが甘くて素敵ですもの」


 ほぅっとリンゼイは溜め息を洩らす。


「たくさん召し上がられてください」


 アリエッタはクスクスと笑いながら別の皿にも盛り付けると、リンゼイは眼を輝かせた。





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